Copyright (c) 集客アップ All Rights Reserved.

屋外広告物法

屋外広告物法

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために、屋外広告物の表示及び屋外広告物を掲出する物件の設置並びにこれらの維持並びに屋外広告業について、必要な規制の基準を定めることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において屋外広告物とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。
2 この法律において屋外広告業とは、屋外広告物の表示又は広告物を掲出する物件の設置を行う営業をいう。
第二章 広告物等の制限
(広告物の表示等の禁止)
第三条 都道府県は、条例で定めるところにより、良好な景観又は風致を維持するために必要があると認めるときは、次に掲げる地域又は場所について、広告物の表示又は掲出物件の設置を禁止することができる。
一 都市計画法 第二章の規定により定められた第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、景観地区、風致地区又は伝統的建造物群保存地区
二 文化財保護法 第二十七条又は第七十八条第一項の規定により指定された建造物の周囲で、当該都道府県が定める範囲内にある地域、同法第百九条第一項若しくは第二項又は第百十条第一項の規定により指定され、又は仮指定された地域及び同法第百四十三条第二項に規定する条例の規定により市町村が定める地域
三 森林法 第二十五条第一項第十一号に掲げる目的を達成するため保安林として指定された森林のある地域
四 道路、鉄道、軌道、索道又はこれらに接続する地域で、良好な景観又は風致を維持するために必要があるものとして当該都道府県が指定するもの
五 公園、緑地、古墳又は墓地
六 前各号に掲げるもののほか、当該都道府県が特に指定する地域又は場所
2 都道府県は、条例で定めるところにより、良好な景観又は風致を維持するために必要があると認めるときは、次に掲げる物件に広告物を表示し、又は掲出物件を設置することを禁止することができる。
一 橋りよう
二 街路樹及び路傍樹
三 銅像及び記念碑
四 景観法 第十九条第一項の規定により指定された景観重要建造物及び同法第二十八条第一項の規定により指定された景観重要樹木
五 前各号に掲げるもののほか、当該都道府県が特に指定する物件
3 都道府県は、条例で定めるところにより、公衆に対する危害を防止するために必要があると認めるときは、広告物の表示又は掲出物件の設置を禁止することができる。
(広告物の表示等の制限)
第四条 都道府県は、条例で定めるところにより、良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために必要があると認めるときは、広告物の表示又は掲出物件の設置について、都道府県知事の許可を受けなければならないとすることその他必要な制限をすることができる。
(広告物の表示の方法等の基準)
第五条 前条に規定するもののほか、都道府県は、良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために必要があると認めるときは、条例で、広告物の形状、面積、色彩、意匠その他表示の方法の基準若しくは掲出物件の形状その他設置の方法の基準又はこれらの維持の方法の基準を定めることができる。
(景観計画との関係)
第六条 景観法第八条第一項の景観計画に広告物の表示及び掲出物件の設置に関する行為の制限に関する事項が定められた場合においては、当該景観計画を策定した景観行政団体(同法第七条第一項の景観行政団体をいう。以下同じ。)の前三条の規定に基づく条例は、当該景観計画に即して定めるものとする。
第三章 監督
(違反に対する措置)
第七条 都道府県知事は、条例で定めるところにより、第三条から第五条までの規定に基づく条例に違反した広告物を表示し、若しくは当該条例に違反した掲出物件を設置し、又はこれらを管理する者に対し、これらの表示若しくは設置の停止を命じ、又は相当の期限を定め、これらの除却その他良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために必要な措置を命ずることができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による措置を命じようとする場合において、当該広告物を表示し、若しくは当該掲出物件を設置し、又はこれらを管理する者を過失がなくて確知することができないときは、これらの措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。ただし、掲出物件を除却する場合においては、条例で定めるところにより、相当の期限を定め、これを除却すべき旨及びその期限までに除却しないときは、自ら又はその命じた者若しくは委任した者が除却する旨を公告しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法 第三条から第六条までに定めるところに従い、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせ、その費用を義務者から徴収することができる。
4 都道府県知事は、第三条から第五条までの規定に基づく条例に違反した広告物又は掲出物件が、はり紙、はり札等、広告旗又は立看板等であるときは、その違反に係るはり紙、はり札等、広告旗又は立看板等を自ら除却し、又はその命じた者若しくは委任した者に除却させることができる。ただし、はり紙にあつては第一号に、はり札等、広告旗又は立看板等にあつては次の各号のいずれにも該当する場合に限る。
一 条例で定める都道府県知事の許可を受けなければならない場合に明らかに該当すると認められるにもかかわらずその許可を受けないで表示され又は設置されているとき、条例に適用を除外する規定が定められている場合にあつては当該規定に明らかに該当しないと認められるにもかかわらず禁止された場所に表示され又は設置されているとき、その他条例に明らかに違反して表示され又は設置されていると認められるとき。
二 管理されずに放置されていることが明らかなとき。
(除却した広告物等の保管、売却又は廃棄)
第八条 都道府県知事は、前条第二項又は第四項の規定により広告物又は掲出物件を除却し、又は除却させたときは、当該広告物又は掲出物件を保管しなければならない。ただし、除却し、又は除却させた広告物がはり紙である場合は、この限りでない。
2 都道府県知事は、前項の規定により広告物又は掲出物件を保管したときは、当該広告物又は掲出物件の所有者、占有者その他当該広告物又は掲出物件について権原を有する者に対し当該広告物又は掲出物件を返還するため、条例で定めるところにより、条例で定める事項を公示しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定により保管した広告物若しくは掲出物件が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又は前項の規定による公示の日から次の各号に掲げる広告物若しくは掲出物件の区分に従い当該各号に定める期間を経過してもなお当該広告物若しくは掲出物件を返還することができない場合において、条例で定めるところにより評価した当該広告物若しくは掲出物件の価額に比し、その保管に不相当な費用若しくは手数を要するときは、条例で定めるところにより、当該広告物又は掲出物件を売却し、その売却した代金を保管することができる。
一 前条第四項の規定により除却された広告物 二日以上で条例で定める期間
二 特に貴重な広告物又は掲出物件 三月以上で条例で定める期間
三 前二号に掲げる広告物又は掲出物件以外の広告物又は掲出物件 二週間以上で条例で定める期間
4 都道府県知事は、前項に規定する広告物又は掲出物件の価額が著しく低い場合において、同項の規定による広告物又は掲出物件の売却につき買受人がないとき、又は売却しても買受人がないことが明らかであるときは、当該広告物又は掲出物件を廃棄することができる。
5 第三項の規定により売却した代金は、売却に要した費用に充てることができる。
6 前条第二項及び第四項並びに第一項から第三項までに規定する広告物又は掲出物件の除却、保管、売却、公示その他の措置に要した費用は、当該広告物又は掲出物件の返還を受けるべき広告物又は掲出物件の所有者等に負担させることができる。
7 第二項の規定による公示の日から起算して六月を経過してもなお第一項の規定により保管した広告物又は掲出物件を返還することができないときは、当該広告物又は掲出物件の所有権は、当該広告物又は掲出物件を保管する都道府県に帰属する。
第四章 屋外広告業
第一節 屋外広告業の登録等
(屋外広告業の登録)
第九条 都道府県は、条例で定めるところにより、その区域内において屋外広告業を営もうとする者は都道府県知事の登録を受けなければならないものとすることができる。
第十条 都道府県は、前条の条例には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 登録の有効期間に関する事項
二 登録の要件に関する事項
三 業務主任者の選任に関する事項
四 登録の取消し又は営業の全部若しくは一部の停止に関する事項
五 その他登録制度に関し必要な事項
2 前条の条例は、前項第一号から第四号までに掲げる事項について、次に掲げる基準に従つて定めなければならない。
一 前項第一号に規定する登録の有効期間は、五年であること。
二 前項第二号に掲げる登録の要件に関する事項は、登録を受けようとする者が次のいずれかに該当するとき、又は申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならないものとすること。
イ 当該条例の規定により登録を取り消され、その処分のあつた日から二年を経過しない者
ロ 屋外広告業を営む法人が当該条例の規定により登録を取り消された場合において、その処分のあつた日前三十日以内にその役員であつた者でその処分のあつた日から二年を経過しない者
ハ 当該条例の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
ニ この法律に基づく条例又はこれに基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
ホ 屋外広告業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人がイからニまで又はヘのいずれかに該当するもの
ヘ 法人でその役員のうちにイからニまでのいずれかに該当する者があるもの
ト 業務主任者を選任していない者
三 前項第三号に掲げる業務主任者の選任に関する事項は、登録を受けようとする者にあつては営業所ごとに次に掲げる者のうちから業務主任者となるべき者を選任するものとし、登録を受けた者にあつては当該業務主任者に広告物の表示及び掲出物件の設置に係る法令の規定の遵守その他当該営業所における業務の適正な実施を確保するため必要な業務を行わせるものとすること。
イ 国土交通大臣の登録を受けた法人が広告物の表示及び掲出物件の設置に関し必要な知識について行う試験に合格した者
ロ 広告物の表示及び掲出物件の設置に関し必要な知識を修得させることを目的として都道府県の行う講習会の課程を修了した者
ハ イ又はロに掲げる者と同等以上の知識を有するものとして条例で定める者
四 前項第四号の登録の取消し又は営業の全部若しくは一部の停止に関する事項は、登録を受けた者が次のいずれかに該当するときは、その登録を取消し、又は六月以内の期間を定めてその営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができるものとすること。
イ 不正の手段により屋外広告業の登録を受けたとき。
ロ 第二号ロ又はニからトまでのいずれかに該当することとなつたとき。
ハ この法律に基づく条例又はこれに基づく処分に違反したとき。
(屋外広告業を営む者に対する指導、助言及び勧告)
第十一条 都道府県知事は、条例で定めるところにより、屋外広告業を営む者に対し、良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。
第二節 登録試験機関
(登録)
第十二条 第十条第二項第三号イの規定による登録は、同号イの試験の実施に関する事務を行おうとする者の申請により行う。
(欠格条項)
第十三条 次の各号のいずれかに該当する法人は、第十条第二項第三号イの規定による登録を受けることができない。 一 この法律の規定に違反して、刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者であること。
二 第二十五条第一項又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者であること。
三 その役員のうちに、第一号に該当する者があること。
(登録の基準)
第十四条 国土交通大臣は、第十二条の規定により登録を申請した者が次に掲げる要件のすべてに適合しているときは、第十条第二項第三号イの規定による登録をしなければならない。この場合において、登録に関して必要な手続は、国土交通省令で定める。
一 試験を別表の上欄に掲げる科目について行い、当該科目についてそれぞれ同表の下欄に掲げる試験委員が問題の作成及び採点を行うものであること。
二 試験の信頼性の確保のための次に掲げる措置がとられていること。
イ 試験事務について専任の管理者を置くこと。
ロ 試験事務の管理に関する文書が作成されていること。
ハ ロの文書に記載されたところに従い試験事務の管理を行う専任の部門を置くこと。
三 債務超過の状態にないこと。
(登録の公示等)
第十五条 国土交通大臣は、第十条第二項第三号イの規定による登録をしたときは、当該登録を受けた者の名称及び主たる事務所の所在地並びに当該登録をした日を公示しなければならない。
2 登録試験機関は、その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
3 国土交通大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。
(役員の選任及び解任)
第十六条 登録試験機関は、役員を選任し、又は解任したときは、遅滞なく、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
(試験委員の選任及び解任)
第十七条 登録試験機関は、第十四条第一号の試験委員を選任し、又は解任したときは、遅滞なく、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
(秘密保持義務等)
第十八条 登録試験機関の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、試験事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
2 試験事務に従事する登録試験機関の役員及び職員は、刑法 その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
(試験事務規程)
第十九条 登録試験機関は、国土交通省令で定める試験事務の実施に関する事項について試験事務規程を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 国土交通大臣は、前項の規定により認可をした試験事務規程が試験事務の適正かつ確実な実施上不適当となつたと認めるときは、登録試験機関に対して、これを変更すべきことを命ずることができる。
(財務諸表等の備付け及び閲覧等)
第二十条 登録試験機関は、毎事業年度経過後三月以内に、その事業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書又は収支計算書並びに事業報告書(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条において同じ。)の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項及び第三十三条において財務諸表等という。)を作成し、五年間登録試験機関の事務所に備えて置かなければならない。
2 試験を受けようとする者その他の利害関係人は、登録試験機関の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号の請求をするには、登録試験機関の定めた費用を支払わなければならない。
一 財務諸表等が書面をもつて作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の請求
三 財務諸表等が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を国土交通省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することの請求又は当該事項を記載した書面の交付の請求
(帳簿の備付け等)
第二十一条 登録試験機関は、国土交通省令で定めるところにより、試験事務に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、保存しなければならない。
(適合命令)
第二十二条 国土交通大臣は、登録試験機関が第十四条各号のいずれかに適合しなくなつたと認めるときは、その登録試験機関に対し、これらの規定に適合するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(報告及び検査)
第二十三条 国土交通大臣は、試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、登録試験機関に対して、試験事務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、登録試験機関の事務所に立ち入り、試験事務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(試験事務の休廃止)
第二十四条 登録試験機関は、国土交通大臣の許可を受けなければ、試験事務の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
2 国土交通大臣は、前項の規定による許可をしたときは、その旨を公示しなければならない。
(登録の取消し等)
第二十五条 国土交通大臣は、登録試験機関が第十三条第一号又は第三号に該当するに至つたときは、当該登録試験機関の登録を取り消さなければならない。
2 国土交通大臣は、登録試験機関が次の各号のいずれかに該当するときは、当該登録試験機関に対して、その登録を取り消し、又は期間を定めて試験事務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 第十五条第二項、第十六条、第十七条、第二十条第一項、第二十一条又は前条第一項の規定に違反したとき。
二 正当な理由がないのに第二十条第二項各号の規定による請求を拒んだとき。
三 第十九条第一項の規定による認可を受けた試験事務規程によらないで試験事務を行つたとき。
四 第十九条第二項又は第二十二条の規定による命令に違反したとき。
五 不正な手段により第十条第二項第三号イの規定による登録を受けたとき。
3 国土交通大臣は、前二項の規定により登録を取り消し、又は前項の規定により試験事務の全部若しくは一部の停止を命じたときは、その旨を公示しなければならない。
第五章 雑則
(特別区の特例)
第二十六条 この法律中都道府県知事の権限に属するものとされている事務で政令で定めるものは、特別区においては、政令で定めるところにより特別区の長が行なうものとする。この場合においては、この法律中都道府県知事に関する規定は、特別区の長に関する規定として特別区の長に適用があるものとする。
(大都市等の特例)
第二十七条 この法律中都道府県が処理することとされている事務で政令で定めるものは、地方自治法 第二百五十二条の十九第一項の指定都市及び同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市においては、政令で定めるところにより、指定都市又は中核市が処理するものとする。この場合においては、この法律中都道府県に関する規定は、指定都市等に関する規定として指定都市等に適用があるものとする。
(景観行政団体である市町村の特例等)
第二十八条 都道府県は、地方自治法第二百五十二条の十七の二の規定によるもののほか、第三条から第五条まで、第七条又は第八条の規定に基づく条例の制定又は改廃に関する事務の全部又は一部を、条例で定めるところにより、景観行政団体である市町村又は地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律 第七条第一項に規定する認定市町村である市町村が処理することとすることができる。この場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、当該市町村の長に協議しなければならない。
(適用上の注意)
第二十九条 この法律及びこの法律の規定に基づく条例の適用に当たつては、国民の政治活動の自由その他国民の基本的人権を不当に侵害しないように留意しなければならない。



特定多目的ダム法

特定多目的ダム法

特定多目的ダム法
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、多目的ダムの建設及び管理に関し河川法の特例を定めるとともに、ダム使用権を創設し、もつて多目的ダムの効用をすみやかに、かつ、十分に発揮させることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において多目的ダムとは、国土交通大臣が河川法第九条第一項の規定により自ら新築するダムで、これによる流水の貯留を利用して流水が発電、水道又は工業用水道の用に供されるものをいい、余水路、副ダムその他ダムと一体となつてその効用を全うする施設又は工作物を含むものとする。
2 この法律において「ダム使用権」とは、多目的ダムによる一定量の流水の貯留を一定の地域において確保する権利をいう。
(特定用途のための流水占用の制限)
第三条 多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供する者は、河川法第二十三条の規定による流水の占用の許可又は同法第二十三条の二の規定による流水の占用の登録によつて生ずる権利を有するほか、ダム使用権を有する者でなければならない。
第二章 多目的ダムの建設
(基本計画)
第四条 国土交通大臣は、多目的ダムを新築しようとするときは、その建設に関する基本計画を作成しなければならない。
2 基本計画には、新築しようとする多目的ダムに関し、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 建設の目的
二 位置及び名称
三 規模及び型式
四 貯留量、取水量及び放流量並びに貯留量の用途別配分に関する事項
五 ダム使用権の設定予定者
六 建設に要する費用及びその負担に関する事項
七 工期
八その他建設に関する基本的事項
3次の各号に掲げる要件に該当する多目的ダムに関する基本計画の作成又は変更の際、発電の用以外の特定用途の全部又は一部についてダム使用権の設定予定者を定めることができない特別の事情があり、かつ、当該基本計画の作成後政令で定める期間内にこれを定めることができる見込みが十分であるときは、当該特定用途に係る前項各号に掲げる事項については、その際定めることができる限度において基本計画に定めれば足りる。この場合においては、国土交通大臣は、当該ダム使用権の設定予定者を定めることができることとなつた後、遅滞なく、当該基本計画を変更して、必要な事項を定めなければならない。
一 当該多目的ダムにより、洪水等による災害の発生を防止し若しくは軽減し、又は流水の正常な機能を維持し若しくは増進する緊急の必要があること。
二 発電の用以外の特定用途に係る水の需要が十分にあり、かつ、当該多目的ダムによりその供給を確保する緊急の必要があること。
4 国土交通大臣は、基本計画を作成し、変更し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事及び基本計画に定められるべき、又は定められたダム使用権の設定予定者の意見をきかなければならない。この場合において、関係都道府県知事は、意見を述べようとするときは、当該都道府県の議会の議決を経なければならない。
5 国土交通大臣は、基本計画を作成し、変更し、又は廃止したときは、すみやかに、その旨を公示するとともに、関係行政機関の長、関係都道府県知事及びダム使用権の設定予定者に通知しなければならない。
(ダム使用権の設定予定者の要件)
第五条 ダム使用権の設定予定者は、ダム使用権の設定を申請した者で、第十五条第二項各号に掲げる要件を備える者でなければならない。
(ダム使用権の設定予定者の地位の承継)
第六条 相続人、合併又は分割により設立される法人その他のダム使用権の設定予定者の一般承継人は、被承継人が有していたこの法律の規定に基づく地位を承継する。
(建設費の負担)
第七条 ダム使用権の設定予定者は、多目的ダムの建設に要する費用のうち、建設の目的である各用途について、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該用途に供することによつて得られる効用から算定される推定の投資額及び当該用途のみに供される工作物でその効用と同等の効用を有するものの設置に要する推定の費用の額並びに多目的ダムの建設に要する費用の財源の一部に借入金が充てられる場合においては、支払うべき利息の額を勘案して、政令で定めるところにより算出した額の費用を負担しなければならない。
2 多目的ダムの建設に要する費用の範囲、負担金の納付の方法及び期限その他前項の負担金に関し必要な事項は、政令で定める。
第八条 多目的ダムの建設に要する費用について河川法第六十条第一項の規定により都道府県が負担すべき負担金の額は、その建設に要する費用の額から前条第一項の負担金及び政令で定めるその他の負担金の額を控除した額に同法第六十条第一項に定める都道府県の負担割合を乗じた額及び都道府県が収納する政令で定めるその他の負担金の額を合算した額とする。
(受益者負担金)
第九条 多目的ダムの建設によつて著しく利益を受ける者がある場合において、その者が流水を政令で定める用途に供する者であるときは国土交通大臣、その他の者であるときは都道府県知事は、その利益を受ける限度において、多目的ダムの建設に要する費用の一部を負担させることができる。
2 前項の負担金を徴収する場合における負担金の徴収を受ける者の範囲及び徴収の方法については、国土交通大臣が負担させる場合にあつては政令で、都道府県知事が負担させる場合にあつては都道府県の条例で定める。
第十条 専用の施設を新設し、又は拡張して、新築される多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水をかんがいの用に供する者は、多目的ダムの建設に要する費用につき当該用途について第七条第一項に規定する方法と同一の方法により算出した額のうち十分の一以内で政令で定める割合の額及びその額に対応する建設期間中の利息の額を合算した額の負担金を負担しなければならない。
2 前項の負担金は、都道府県知事が徴収する。
3 前条第二項の規定は、前項の負担金について準用する。
(負担金等の帰属)
第十一条 前二条の規定により都道府県知事が負担させ、又は徴収した負担金及びその負担金の納付義務者から徴収した延滞金は、当該都道府県に帰属する。
(建設費負担金の還付)
第十二条 ダム使用権の設定予定者のダム使用権の設定の申請が却下され、又は取り下げられたときは、その者がすでに納付した第七条第一項の負担金を還付するものとする。ただし、国土交通大臣は、基本計画を廃止する場合を除き、新たにダム使用権の設定予定者が定められるまでその還付を停止することができる。
(ダム使用権設定前の多目的ダムの利用)
第十三条 ダム使用権の設定予定者は、第三条の規定にかかわらず、ダム使用権の設定を受ける前に、国土交通大臣の許可を受けて、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供することができる。
(建設の完了)
第十四条 国土交通大臣は、多目的ダムの建設を完了したときは、遅滞なく、その旨を公示するものとする。
第三章 ダム使用権
(設定の要件)
第十五条 ダム使用権は、国土交通大臣が、流水を特定用途に供しようとする者の申請によつて設定する。
2 国土交通大臣は、次の各号に掲げる要件に適合すると認めた場合でなければ、ダム使用権を設定してはならない。
一 申請人が多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該特定用途に供することが、河川の総合開発の目的に適合すること。
二 申請人が、流水を当該特定用途に供することについて、及び流水を当該特定用途に供することによつて営もうとする事業について必要な行政庁の許可、認可その他の処分を受けていること又は受ける見込が十分であること。
(設定の申請の却下)
第十六条 国土交通大臣は、基本計画を作成したときは、基本計画にダム使用権の設定予定者として定められた者以外の者の設定の申請を却下することができる。
2 国土交通大臣は、次の各号の一に該当すると認めたときは、ダム使用権の設定予定者の設定の申請を却下しなければならない。
一 ダム使用権の設定予定者が、前条第二項の要件を備えなくなつたとき。
二 第七条第一項の負担金を納付しないとき。
三 基本計画を廃止したとき。
(設定)
第十七条 国土交通大臣は、多目的ダムの建設を完了したときは、ただちに、ダム使用権の設定予定者にダム使用権の設定をしなければならない。
第十八条 ダム使用権の設定は、次の各号に掲げる事項を明らかにして行わなければならない。
一 設定の目的
二 ダム使用権により貯留が確保される流水の最高及び最低の水位並びに量
2 前項第二号に掲げる事項は、当該多目的ダムが十分にその効用を果すために適切なものでなければならない。
(流水の貯留が確保される地域)
第十九条 ダム使用権によつて流水の貯留が確保される地域は、前条第一項第二号に規定する流水の最高水位における水平面が土地に接する線によつて囲まれる地域とする。
(性質)
第二十条 ダム使用権は、物権とみなし、この法律に別段の定がある場合を除き、不動産に関する規定を準用する。
第二十一条 ダム使用権は、相続、法人の合併その他の一般承継、譲渡、滞納処分、強制執行、仮差押え及び仮処分並びに一般の先取特権及び抵当権の目的となるほか、権利の目的となることができない。
(処分の制限)
第二十二条 ダム使用権は、国土交通大臣の許可を受けなければ、移転の目的とし、分割し、併合し、又はその設定の目的を変更することができない。
第二十三条 抵当権の設定が登録されているダム使用権については、その抵当権者の同意がなければ、分割、併合若しくは設定の目的の変更の許可を申請し、又はこれを放棄することができない。
(取消しの処分等)
第二十四条 国土交通大臣は、ダム使用権者の有する流水占用権につき、河川法第二十三条の規定による許可又は同法第二十三条の二の規定による登録の全部又は一部を取り消す場合において、何人にも従前どおりの流水の占用を認めることができないときは、ダム使用権につき、これに相当する取消し又は変更の処分をしなければならない。
第二十五条 国土交通大臣は、ダム使用権者の有する流水占用権につき、河川法第二十三条の規定による許可又は同法第二十三条の二の規定による登録の全部又は一部を取り消した場合において、他の者に新たに流水の占用を認めるため必要があるときは、ダム使用権者に対し、相当の期間を定めてダム使用権の全部又は一部を他の者に譲渡すべきことを命ずることができる。
2 前項の期間内にダム使用権の譲渡がされないときは、国土交通大臣は、ダム使用権者の有していた流水占用権の全部又は一部と同一の流水占用権につき他の者が河川法第二十三条の規定による許可又は同法第二十三条の二の規定による登録を受ける見込みが十分であるときに限り、ダム使用権の全部又は一部につき取消しの処分をすることができる。
(登録)
第二十六条 ダム使用権又はダム使用権を目的とする抵当権の設定、変更、移転、消滅及び処分の制限は、ダム使用権登録簿に登録する。
2 前項の規定による登録は、登記に代るものとする。
3 第一項の規定による登録に関する処分については、行政手続法 第二章及び第三章の規定は、適用しない。
4 ダム使用権登録簿については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の規定は、適用しない。
5 ダム使用権登録簿に記録されている保有個人情報については、同法第四章の規定は、適用しない。
(納付金)
第二十七条 ダム使用権の設定を受ける者は、第十七条の規定により設定を受ける場合を除き、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該ダム使用権の設定の目的である用途に供することによつて得られる効用から算定される推定の投資額を勘案して、政令で定めるところにより算出した額の納付金を国に納付しなければならない。
(負担金等の還付)
第二十八条 ダム使用権につき、第二十四条又は第二十五条第二項の規定による取消又は変更の処分があつたときは、国は、すでに納付された第七条第一項の負担金又は前条の納付金のうち、同条に規定する方法と同一の方法により算出した金額を還付するものとする。ただし、第十七条の規定によりダム使用権の設定を受けた者に対して還付する額は、第七条第一項の負担金の額から政令で定めるところにより算定した償却額を控除した額をこえないものとする。
2 第二十四条又は第二十五条第二項の規定による取消又は変更の処分により消滅した全部又は一部のダム使用権の上に抵当権の設定が登録されているときは、国は、その抵当権者の承諾を得た場合を除き、前項の還付金を供託しなければならない。
3 抵当権者は、前項の規定により供託された還付金に対して、その権利を行うことができる。
第四章 多目的ダムの管理
(操作の基本原則)
第三十条 多目的ダムの操作は、流水によつて生ずる公利を増進し、及び公害を除却し、又は軽減するとともに、ダム使用権を侵害しないように行わなければならない。
(操作規則)
第三十一条 国土交通大臣は、多目的ダムの操作の基本原則に従い、多目的ダムの操作規則を定めなければならない。
2 多目的ダムの操作規則に定める事項については、政令で定める。
3 国土交通大臣は、多目的ダムの操作規則を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事及びダム使用権の設定予定者又はダム使用権者の意見をきかなければならない。
(放流に関する通知等)
第三十二条 国土交通大臣又は多目的ダムを管理する都道府県知事は、多目的ダムによつて貯留された流水を放流することによつて流水の状況に著しい変化を生ずると認める場合において、これによつて生ずる危害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、あらかじめ、関係都道府県知事、関係市町村長及び関係警察署長に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置をとらなければならない。
2 前項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法 第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
(管理費用の負担)
第三十三条 ダム使用権者は、政令で定めるところにより、多目的ダムの維持、修繕その他の管理に要する費用の一部を負担しなければならない。
第五章 雑則
(特別の納付金)
第三十五条 第十三条の規定による許可を受けたダム使用権の設定予定者又はダム使用権者で、三月三十一日現在において多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供している者は、翌年の六月三十日までに、国又は都道府県が当該多目的ダムに関し国有資産等所在市町村交付金法 第二十条の規定により地方公共団体に交付する交付金に相当する額の納付金を、国又は都道府県に納付しなければならない。
(強制徴収)
第三十六条 第七条第一項、第九条第一項若しくは第十条第一項の負担金、第三十三条のダム使用権者の負担金又は第二十七条若しくは前条の納付金を納付しない者があるときは、国土交通大臣又は都道府県知事は、督促状によつて納付すべき期限を指定して督促しなければならない。
2 前項の場合においては、国土交通大臣又は都道府県知事は、国土交通省令で定めるところにより、延滞金を徴収することができる。ただし、延滞金は、年十四・五パーセントの割合を乗じて計算した額をこえない範囲内で定めなければならない。
3 第一項の規定による督促を受けた者がその指定する期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、国土交通大臣又は都道府県知事は、国税滞納処分の例により前二項に規定する負担金等及び延滞金を徴収することができる。この場合における負担金等及び延滞金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
4 延滞金は、負担金等に先だつものとする。
5 負担金等及び延滞金を徴収する権利は、五年間行わないときは、時効により消滅する。
(権限の委任)
第三十七条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。


ロゴで集客アップ次へ